2023年の元旦に

 

 2023年、最大の関心事は日本円の人民元に対する換金レートだ。昨年の年平均レートは、一昨年と比較して14%近く円安になった。大幅な収入減になり、節約だけで穴埋めできるような額ではなかった。
 昨年暮れに日銀のボスが突然登場してきて、金融政策の方針転換らしき話をした。その効果であろうか、円が少しだけ高くなった。だが、第二弾、第三弾と続けてもらわなければ意味がない。

 

 

 

 

 

 

    …1月の西安…


 今期の損益計画は

 

 節約生活に慣れ、耐えることをしっかり学んだ。また、耐えていれば、幸を手にすることができることも知った。前向きな気持ちで今期の損益計画書の作成に取り掛かる。

 

 方法を変えながら試算してみるが、前期から繰り越された経費も多く、赤字問題を解決できない。そんな折、プレゼントが届いた。昨年9月に申請した西安市の補助金が受理されたのだ。諦めかけていただけに、この喜びは大きい。節約ストレス解消のためにパットと使ってしまいたいところだが、厳しい財政状況にもかかわらず西安市が支給してくれる補助金。大切に使わなければ神様の罰が当たる。

 

 補助金と少しではあるが円高効果により、損益計画書の作成スピートがアップ。僅かだが利益金を確保して、2023年度の損益計画書が完成した。今は、想定した日本円の換金レートが正しからんことを祈るばかりだ。
 

 

 

 

 

 

 

 


 
 コロナ感染状況 

 

 12月のゼロコロナ政策終了後に西安は大混乱に陥った。感染が再拡大して病院の医療体制が崩壊、医薬品やワクチンを含む感染対策用品が不足。それに、職場でクラスターが発生するなど、働いている人は少人数だけになった。

 

 世界中から支援を申し出ているが、中国政府は断ってばかり。素直な気持ちで好意を受けることが何故できないのだろう。面子を気にしている状況ではないと思う。

 

 1月10日、中国政府は日本人と韓国人のビザ発給を停止した。韓国の国会議員団が台湾を訪問したからか、それとも日本の総理大臣がイタリアやイギリスと軍事的な結びつきを強くしたからか。いずれにしても、一方的な報復措置に思える。何故、近隣の国ともっと仲良くできないのだろう。



 

 

 

 



 春節のプレゼント

 春節休暇に対する本社社員の考え方に変化が見られるようになった。以前は、「この忙しい時期に休暇なんて。」と愚痴っていたが、今は静かだ。中国人にとって、春節は一年で一番大切な日という理解ができたのだ。西安開設から16年、やっとここまで来ることができた。

 

 今年の春節休暇は、1月21日から27日までの7日間。多くの地元企業は休暇前後に数日の休暇を加えるが、我社はカレンダー通りの勤務。仕事のピークが毎年1月から3月にくるので仕方がない。そこで、昨年と同様に社員に春節プレゼントを贈ることにした。

 

 昨年は伝統的なおせち料理、今年はお洒落なナッツの詰め合わせセットを予定した。だが、コロナ感染は治まらず、テレワーク体制を続けるしかない状況。これでは、春節前に社員に手渡すことができない。残念だが、春節プレゼントは中止だ。




 

 



 

 
 …2月の西安…   

 

 テレワークはいつまで


  昨年の11月21日からテレワークを続けてきた。現在の外の様子は、街中に人が溢れている。テレワークは、もう時代遅れなのか。だが、春節休暇中の中国人民大移動後の感染大爆発が怖くて、テレワークが終われないでいる。

 

 現在までの社員コロナ感染率は66%、西安では珍しいほどの低さだが、感染者ゼロを目指していただけに残念である。全員が家庭内感染によるもので、テレワーク効果はなかった。感染者から話を聞くと、健康意識の低さに原因がありそうだ。

 

 感染者には抗体ができているが、未感染者は抗体ができていない。テレワーク終了時期について迷う日が続いたが、テレワークも3ヶ月を越えてくると社員の気持ちも緩んでくる。気分を引き締める意味で、3月1日からの全員出社を決めた。

 

 

 




 

 

 

 
 …3月の西安…

 

 春期募集
  

 

 今期唯一の将来への投資である春期新卒募集を始める。昨年秋の募集では、大学院卒業予定者を中心に活動した。2名の採用を決めたが面接時に聞いた話は全部嘘で、12月に入って両名とも採用を辞退してきた。嘘は大嫌いだ。

 

 春期募集は、大卒予定者を中心に進める。予定人員は3名、日本が大好きで日本へ行くことを強く希望する学生を中心に選ぶつもりだ。冬休みが終わり、学生たちが学校に戻り始めた3月初旬から応募者が増えてきた。意外だったのは、大学院卒の応募者が3分の1近くを占めていた。

 

 今回の採用試験は会社に来てもらい実施する。その分審査が厳重になったのか、3月下旬での採用内定者数は2名だけ。今年は学生にとっては就職氷河期、残り1名の採用はどうにかなるだろう。

 



 

 

 




 

 


 


 春の園芸

 

 寒さに負けず園芸作業を続けた効果により、春に花木たちが期待通りの花を咲かせてくれた。サザンカ、トサミズキ、ツバキ、シデコブシ、チャノキ、ハナモモの他にも次々と。これまで蕾のうちに鳥たちに食べられていたシデコブシの花が、今年は被害に遭うことなく満開の花を咲かせてくれた。また、昨年秋に植替えしたスイセンも、早い時期から楽しませてくれている。花は心を癒し元気にしてくれる。世話をすれば必ず応えてくれる。植物は恩・義理・人情を知っている。

 

 昨年、カメリア・ガーデンを目指して植込んだ山茶花や椿の幼木も順調に育っている。この春も園芸店を周り、カメリア化を進めるために椿の幼木9本を購入した。嬉しかったのは、探し続けてきた黒侘助を見つけたことだ。渋くて落ち着いた色合いが好きだ。

 

 植込み作業を始める。理想的な雑木ガーデンの樹木構成は、常緑樹3割、落葉樹7割と聞いている。椿が増えることでバランスが崩れるが、気にしていたらカメリア・ガーデンへの夢が叶えられない。無視して進めていく。

 

 植込みが終わると花後の剪定作業だ。太い枝は冬の休眠期に切るが、殆どは花後のこの時期に感謝の気持ちを込めて、風通しと日当たりを目的に行う。これが終わると直ぐに翌年の花のための作業が始まる。お礼肥や殺虫剤散布、芽摘みといった作業で、一年で一番忙しい時期を迎える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 …4月の西安…

 

 新茶の季節  


 この時期になると新茶のことが気になる。新茶は色が透き通っていて、香り良く、爽やかな気分にしてくれる。毎年楽しみにしている新茶は杭州産「西湖龍井茶」だ。有名な緑茶だけに値段も高い。だから、懐具合に合わせて購入するクラスを変えている。最上級クラスだと3両(150g)が6000元、上級は2500元、普通は1000元前後だ。当然、味は値段にイコール。冷蔵庫で保管しながらチビチビ飲んでいる。

 

 少し間を置いて、安徽省黄山産の「太平猴魁」が加わる。珍しいほど大ぶりな茶葉で、しかも薄い。取り扱いには慎重さが求められ、ピンセットでそっと摘んで透明グラスに入れて湯を注ぐ。すると茶葉は一旦浮き上がりその後ゆらゆらと沈んでいく。中には、漂い続ける茶葉もある。その動きが優雅で、眺めても楽しめる茶葉だ。味は見た目と違い繊細である。

 

 知人が定期的にプレゼントしてくれる緑茶がある。十年以上前になるが、知人の案内で秦嶺山脈を越えた漢中の高度800mにある茶園を訪ねたことがある。新芽の二芽だけを、右手の指先で丁寧に摘み取っていた。爽やかで日本食にも合う味で、名は「漢中毛毫」と言う。

 

 緑茶には多くの効能がある。免疫性を高めてガンや風邪の予防に、豊富なビタミン類が美肌や老化抑制を、含まれている300種の香気がリラックスや覚醒を、その他利尿効果まである。お茶好きの知人からこんな話を聞いた。「毎日朝から晩まで中国茶を飲んでいる私は、コロナに感染した家族の中に居ても感染しなかった。」この自慢話は納得できる。

     
     

 

 

 

 


 

 西安の経済状況

 

 

 ゼロコロナ政策による西安経済への打撃は大きく、店舗や企業の閉鎖が続き厳しい状況にある。大手企業も例外ではなく、西安で最大手の企業集団でも、事業内容により倒産しそうな関連会社がでた。休日の高級百貨店の客は疎らで、売れるのは生活必需品だけ。賑わっていた外食産業も散々で、西安の人口までが減少していると聞く。

 

 賑わっているのは結婚式と関係がある施設だ。感染拡大や都市封鎖で3年間結婚を待たされたカップルが、いっせいに動き出した。有名式場の年内予約はいっぱいだそうだ。

 

 こんな現象も起きている。これまで西安では見ることが無かった高級食材が揃ってきた。これは、北京や上海といった大都市で売上が伸びず、西安へ進出してきたからだろう。多くは生鮮食料品で、中でも新鮮な海産物が届くことは地元住民にとっては喜ばしいことだ。目が透きとおった海の魚などは、内陸部に暮らす西安人にとっては夢のような話である。

 

 

 


 

 

 

 

 …5月の西安…

 

 突然のオフィスビル封鎖

 


 5月12日の午後、突然翌週16日(火曜日)から19日(金曜日)の4日間、オフィスビルを閉鎖するとの知らせがある。中央アジアサミットが西安で開催されることは聞いていたが、まさか事務所に隣接するホテルが利用されるとは思ってなかった。

 

5ヶ国の国家元首たちが集まる会議で、当然中国のボスが議長として参加する。安全を考慮してギリギリのタイミングで通知してきたのだろう。周辺のオフィスビルも全て封鎖されるらしい。

 

国家が決めたこと、これには従うしかない。2回の土曜日・日曜日を出勤日に振り替えるグループと、会議期間中をテレワークにするグループに分け、影響を最小限にとどめることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …6月の西安…

 

 西安に梅雨は


 西安に梅雨はあるの? この問いについての答えは「無い」だ。

 

 梅雨は小笠原高気圧の影響によるもので、内陸部に位置する西安まで勢力を伸ばすことができない。また、インド洋で発生した多量の水蒸気は平野部を貫けて北上して来るが、西安の南にある秦嶺山脈にぶつかって冷やされ雨になる。だから、乾燥した空気が山脈を越えて西安に来る。西安の年間総雨量は岡山の半分程度、周辺には砂漠が点在する。

 

 西安で雨が多いのは9月で、降ったり止んだりのシトシト雨が続く。西安人が傘を持ち歩くのはこの時期だけだ。11月から3月までは殆ど雨が降らず、生活するには加湿器が必要になる。西安オフィスでは湿度50%を保つために、毎年複数台が稼働している。


 

 

 

 

 

 

 


 夏の玉磨き
 
 

 6月からはやぶ蚊のシーズン、作業を園芸から玉磨きに切り替える。玉石は持ってみたくなる石、持つと心までが癒される不思議な石。神の光が宿る石とも呼ばれ、手にすると全身が優しさに包まれる。中国の人たちは災いから身を守ってくれるお守りとして、今でも玉を身に着ける。

 

 今回作業に選んだのは、小さな菩薩半跏像だ。デザイン、彫り、玉質を自己流で分析していくと、製作年代は明時代と鑑定できる。思い出せば、この仏像との出会いから玉収集が始まった。18年も前のことで、初めて入った店の片隅に、埃を被ったまま置かれてあった。通りすがりに見たリラックスしたお姿と優しいお顔が心に留まり、西安の常識である半値・8掛け・5割引の努力の後に購入した。それ以来、ずっと身近なところに置いて、悩みや迷いごとの相談相手になってもらっている。

 

 日本人にとって、中国の骨董品と言えば青銅器、焼物、書画を思い浮かべるが、中国人にとっては7千年の歴史がある玉器が最も価値ある骨董品になっている。玉石から感じられる神聖さに訳がありそうだ。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終活-U


 終活の第二弾は釣り具だ。16年間付き合ってきたフィッシング・ボートを廃船にしてから既に8年、もう釣りに出掛けることはない。釣り竿をケースから出して並べてみる。よくぞここまで揃えたものだと感心する。誰にも負けたくない気持ちが強くて、魚の習性や釣り場を徹底研究、それぞれに適した竿を選んできた結果である。手にすると、魚の感触が伝わってくる。

 

 船釣りを始めたのは45年前。私の釣りは「漁」ではなく、お洒落なフィッシングを目指した。ライト・タックルで魚と一対一の対決をしたい。そんな目的からメイン・ロッドに選んだのが、アメリカのブローニング社製ルアー・ロッドだ。手元から大きく曲がる胴調子の竿で、そのしなりからはセクシーさが感じられた。

 

 リールは確実に取り込むことを第一に考えて、スウェーデンのABU社製を選んだ。ABUの素晴らしさは 、獲物をかけてから取り込むまでのドラッグ調整が自然に行えるところ。魚の動きに合わせてラインがスムーズに出たり入ったり、巻続けているだけでどんな大物も諦めて海面に浮いてくる。セットしたラインはダクロン社製の極細撚糸で、近寄って来る魚の気配までが感じられた。

 

 極細ラインの選択により潮流の影響が少なくなり、錘は小さくて軽いものに、餌の動きが魅力を増し、魚は我慢できずに飛びついてきて、抵抗感なく咥えて走り出す。柔らかいロッドは極限までしなると跳ね返り、釣り針が獲物の上顎に掛かかるといった流れになる。AI機能が搭載されたようなロッドで、同船した誰よりも多くの獲物を釣り上げてきた。船頭にも負けたことがないのが自慢だ。特殊な竿としては、サワラやハマチ釣りに使ったトローリング・ロッドがある。アメリカのフェンウィック社製で、本場の良さが感じられる使い勝手の良いロッドだ。

 

 手入れが終わったところで、プレゼント先を検討した。嘗ての仲間たちは伝統的な日本式漁法の信者ばかりで、お洒落な釣りには無縁の連中。悩んだ末に、お世話になったマリーナへ寄贈することにした。価値を分かってもらえる人がきっといるはずだ。
 未練から1本だけ竿を残した。それは、日本の伝統的な漆塗りの竹製で、穂先にはセミクジラの髭が使われている。使用後にはぬるま湯で洗い、絹拭きしていたことを思い出す。

 

終活は実に楽しい作業、これからも続けていく。