…2017年を迎えて…

 

2017年を迎えて思うのは、最後まで息を抜かないで走ること、失敗を恐れず挑戦を続けることだ。他にもあるが、数が多いと焦りが出る。西安で焦りは禁物、一日一日やるべきことを精一杯やっていくだけ。

 

 …1月の西安…

 

 為替変動による影響 

 

 昨年は本社から送金されてくる日本円が、円高と元安で人民元に換金すると多い額になった。しかし、昨年末あたりから円安が始まり、どこまで落ちていくのか気にしている。円高を期待したいが、自力で事業を発展させていくのが正しい考え方だろう。

 



 


 事務所移転でトラブル

 帰国して直ぐに事務所移転に関するトラブルが発生、西安から頻繁に電話が入ってくる。移転先事務所と現在の事務所の不動産部それぞれから問い合わせが入っているようだ。両所とも同じ会社なのに、どうして? 昨年5月の契約時に、全て決めたはずなのに。

 

 一つ目は、入口ドアの取り付け位置の問題だ。設計図通りに建築工事が行われていれば問題にならないが、中国では建築現場で変更されるケースも多い。完成が近くなって変更が明らかになり、騒動となった。湯騰室の入口が変更されて、我社の入口と正面で向き合うことになった。湯騰室のドアは何故か外開き。事務所のドアは両開き。

 

 もし、廊下を歩いている人がいて、両方のドアが同時に開けられたとしたら? 想像するだけでも寒気がしてくる。西安スタッフに現場に行ってもらい、ドアの位置を再確認する。変更に間違いは無く、当社のドアを左へ5mずらしてもらうことにした。

 

 二つ目は、事務所の賃貸借契約についてだ。3月に予定していた移転が、建築工事の遅れから延期になった。そうなると、新・旧事務所の賃貸借契約期間に問題が出る。しかし、ビルの完成時期が明確になっていないのに決められない。この問題は両不動産部で決めてくれるよう頼んだ。その後、西安スタッフが加わり、移転日は7月29日に決まった。

 

 三つ目は、火災感知器だ。計画では、管理部と開発部の間に天井までの間仕切りを設置する。そうなると、それぞれの部屋に火災感知器が必要になる。昨年5月の契約時に、間仕切り図面を提出して2か所の設置をお願いした。それなのに、どうして? 調べてみると、今回は建設工事を請け負った業者からの連絡で、工事の立体図が欲しいと言っている。プロなら平面図で理解できるだろうに。

 

 日本では考えられないような問題が次々と発生してくる。

 

 

 

 

 

 



 …春節休暇の過ごし方…

 

 今年の春節休暇は1月27日から2月2日までの7日間。日本での仕事を考えていたが、西安の作業が溜まっている。日本で休暇を楽しむ中国人も多いと聞くが、私は中国で仕事をしなければ。

 

 運賃が高騰する休暇前に西安へ移動、直ぐに作業に取り掛かるが、休暇に入っても仕事が続く。少しは春節の雰囲気を味わいたいと、中心街にオープンした西安田舎料理街と大唐不夜城へ出掛けてみた。春節飾りを見ると、何故か心が和んでくる。やはり、仕事には息抜きが必要なのだ。

 

 今年の春節はPM2.5問題で恒例の花火が禁止されて、静けさの中で新年を迎えた。とても寂しい。やはり、中国の春節は花火の音を聞きながら賑やかに迎えるのが似合っている。しっかり公害問題に取り組んで、来年には花火が許可されることを願っている。


 

 

 

 …2月の西安…

 

 日本出張者が急増

 

 我社でも、日本への出張者が急増してきた。昨年9月に入社した新入社員にまで、お客様から声を掛けていただいた。嬉しい話だが、これまで1年かけて教育して日本へ送り出してきただけに心配だ。先輩を同行させるが、それでも気になって仕方がない。

 

 春節休暇が明けて直ぐに出張研修を行なう。私の心配をよそに、本人たちは日本行きを喜んでばかりいる様子だ。服装やマナー、ルールを守る、感謝の気持ちを持つことの大切さなどの再教育を行なう。第一陣は2月中旬に出発。教えをしっかり守ってくれることを願っている。第二陣の出発は3月下旬だ。




 

 

 

 

 採用内定者懇談会

 

 2月中旬、今年9月に入社してくる採用予定者を集めて懇談会を開いた。目的は、3月から始める第一次入社前日本語研修準備のためだ。話を聞くと、大学により登校日が違っていて、全日参加できる者が3名、週に1日が1名、全く駄目が1名だった。

 

 日本語を指導している社員を同席させ、個人ごとの研修日程と学習方法について調整を行なう。3組に分かれての研修になるが、7月から始める第二次入社前日本語研修の開始時には全員のレベルを揃えておきたい。手間は掛かるが、個別にやるしかない。




 

 



 …3月の西安…

 入社前日本語研修がスタート

 

 3月1日、入社前日本語研修がスタート。参加者たちは、他の同級生が学校でやることがなくブラブラ過ごしているのを見て、自分たちは充実した青春を過せていると喜んでいるようだ。

 

 参加して、正しい音が出ているかチェックする。全員に言えるが、口の中で音が籠って聞き取りにくい。原因は、彼らが口を大きく動かしていないからだ。正しい音が出るまで指導を続けた。悪い癖がつくと直らなくなる。

 

 研修中に、日本へ出張した新入社員からの報告書を読んで聞かせた。日本語ができないと仕事にならないことを理解してもらうためだ。良い刺激になるだろう。


 

 

 

 …4月の西安…

 会議室をもう一つ

 

 7月に予定している事務所移転の目的には、増員への対応と遅い通信回線速度問題の解決がある。オフィスレイアウトを再検討していく中で、会議室がもう一つ欲しいという問題が浮かび上がった。開発レビュー回数の増加、開発技術研修での会議室利用が増えてくるからだ。だが、大きな部屋を借りる経済力はない。困った問題だ。

 

 どうにかしたいと考えた。その答えが、近くの住宅マンションの一室を借りて、日本語研修センターを設けることだ。住宅家賃は事務所家賃の3分の1程度である。

 

 調査してみると、道路1本隔てたところに面積67uのマンション一室が見つかった。居間を日本語研修室に、2室ある小部屋の一つを書類保管室に、もう一つは本社から出張してくる開発社員が寝泊まりできる部屋にする。中国の会計書類は永久保管に近く、書類は増えていくばかり。また、マンションの1階にはレストラン街があり、向かいにはスーパーマーケットもオープンする。出張者にはとても便利で、通勤の心配もない。3つの問題が一度に解決す名案だ。




 

 

 

 

 

 

 


 …5月の西安…

 設備の見積もりを依頼

 

 今回の事務所設備は、長期間の使用に耐えるものでなければならない。また、使い勝手が良くて、快適でなければ。ハードルは高い。

 

 設備工事は、電源・LAN・電話ケーブルの配線、間仕切りの移設とパーティション設置、絨毯や看板がある。その他、ドアの安全装置、電話やハブの設置もある。工事期間は6月15日から7月25日まで。少しゆとりを持ったスケジュールにした。西安では何が起きるかわからないからだ。

 

 不動産部への工事申請作業を始める。オフィスレイアウト図の上に配線を書き込み、それを設計士に渡して工事図面に仕上げてもらう。出来上がった図面を付けて不動産部へ工事申請する。

 

 申請認可を待つ間で工事業者を決めなければならない。これまでの工事は、安価で便利な個人事業主にお願いしてきた。しかし、今回はそうはいかない。業者探しを始める。

 

 配線業者が見つかった。打ち合わせてみると、工事内容は膨らむばかり。理由は、中国と日本の常識の違いからだ。例えば、OAフロアーは一般的ではなく、配線するには金属製の配管を床に固定してから配線しなければならない。これまで通りの方法だ。「何のためのOAフロアーか?」つい愚痴が出る。

 

 中国では何をやるにも臨機応変の対応が必要だが、頑固に守っているルールが一つある。それは、材料や機材は最上質の品を選ぶことだ。これまで購入した中国製に良い品はなかった。過去には、照明具が大量の煙を出して黒焦げになったことがある。

 

 品選びの結果は、絨毯とネットワーク関係はアメリカ系、通信機は日本系、事務用品は台湾系のメーカーになった。決めたところで業者と現場へ行き、内容を再確認して各業者に見積もりを依頼した。



 

 

 

 

 

 

 

 …6月の西安…  

 

 設備の発注  

 

 6月上旬、見積書が出揃ったところで西安へ出張。見積金額を見ると、どれも予算オーバーだ。チェックしていくと、予定外の品が記載されていたり、数量まで増えていた。「現場で再確認までしたのに。」と愚痴。

 

 業者を呼んで減額作業を行う。予定外の品は全てカット、高機能化した品は元のレベルにまでダウン、正しい数量に修正を行う。それでもまだ予算オーバー。品質を落とすわけにもいかず、今後のお付き合いの大切さを前面に出して、笑顔で業者と値引き交渉を進める。少しだけオーバーした額で決着をつけた。選んだ品が上質なだけに仕方がないだろう。後は、無償提供してくれるサービスについて業者とじっくり話し合った。

 

 西安流の営業スタイルはどうも私の性格に合わない。リストや図面、機能レベルまで資料を付けて依頼したのに、指示通りの見積書が出てこない。営業マンの思いばかりが込められた見積書になる。困ったものだ。  



 

 

 

 

 

設備工事の確認

 


 6月15日に配線工事が始まる。前回の出張中に、他社の工事を見学させてもらったことがある。工事は最終段階に入っていたが、床下の配線工事を見ると配管は気ままな方向に投げ込まれていただけ、余った線はグジャグジャ状態だった。

 

 配線工事終了後には、会社・工事業者・不動産部それぞれの責任者が立ち会って確認作業が行われる聞く。しかし、その工事を見るとOKが出とはとても思えない。確認作業って本当に意味があるのだろうか?

 

 だが、この確認が終わらないと、次の工事が始められないと言う。滞在2日だけの出張を予定した。

 

西安到着後、直ぐに確認作業を行う。工事は厳重にとの注文通りに整然と配管されていた。不動産部の審査もOK。工務店は誇らしげな表情だ。同じ日に確認作業が行われた部屋があるが、不合格だった。確認作業の意味はあるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …玉のお話-4…

 「玉の楽しみ」

 

 シリーズ最後のテーマ「玉の楽しみ」です。今回は、玉研究を振り返りながら、玉の虜になっていった経緯についてお話させていただきます。玉の楽しみについてご理解いただけるでしょう。

 

 2005年から西安出張が始まり、何か楽しみを見つけたいと書院門古文化街を歩きました。偶然立ち寄った玉器店で、古い観音像を見つけたことが玉収集のきっかけになりました。観音像に光が当たると、像の中に神秘的な明りが灯ったのです。その神秘さに魅せられてしまいました。

 

 休日には、博物館や骨董街の玉器を見て歩きました。素晴らしい作品に出合う度に胸がときめくのです。何故これ程までに?その謎を解くため玉研究を始めました。そして、知れば知るほど玉器が好きになっていったのです。青春時代に好きだった言葉、

 

「To know you is to love you.」を思い出します。 

 

 玉友達が現われ、その友達の友達も作品を持って集まってくるようになりました。正体不明の作品もあり、玉研究は更に進みました。西安では、日本では考えられないほど古い時代の作品に出合うことができるのです。「エ〜、3千年も前にこの作品がつくられたの?」など、驚かされてばかりでした。

 

 古い玉器を眺めていると、歴史物語が浮かんでくるのです。同時時代に生きた偉人たちが登場してきて夢物語が始まります。例えば、作品が唐代の「観音立像」とすると、像の前で空海さんが経を読んでいるとか。玄宗皇帝と楊貴妃が暮らしている部屋に「伎楽飛天」が飾られてあるとかといった物語です。時には、自分自身を登場させて楽しんでいます。

 

 西安では、多くの骨董品が土が付いたままで売られています。それは、土が付いてないと骨董品ではないと思っている人が西安に多いからでしょう。購入後にまずやることは、水を流しながら亀の子タワシと歯ブラシで土や汚れを落とします。その後は、元の持ち主にお許しをいただいてから、柔らかい布でひたすら磨き続けます。数年磨いていると、玉に沁み込んだ歴史の証が下から現れてくるのです。この証を見つけるのが、古玉器一番の楽しみかもしれません。

 

 骨董品の中で、磨いて魅力が増すのは玉器だけでしょう。青銅器や古銭などは磨くほど味わいが無くなり、価値まで下がります。また、焼物のなかには、磨くと色や紋様が消えてしまうものまであります。これらには、ただ眺めるだけの楽しみしかありません。しかし、玉には磨くという大きな楽しみがあるのです。

 

 玉器には、空想上の動物が多く彫られています。日本と共通するところでは、龍や獅子がいます。龍は新石器時代に冠をかぶった蛇から生まれ、その後爪の数、角や衣などを変えながら、今も生き続けています。獅子は戦国時代に、強い動物の強いところだけが集められて誕生しました。その後、神獣、辟邪、獅子と呼び名や姿を変えながらも、守り神として生き続けています。玉文化に触れていると、中国と日本の歴史が同時に見えてくるのです。

 

 中国では玉が見直され、宝物の王座に返り咲きました。玉が持つ温かさとか神秘さといった魅力が再認識されたのでしょう。デパートでも玉コーナーが新設され、現代風にデザインされたネックレスやプレスレットが並べられるようになりました。

 

 玉人気は高まるばかりですが採取量は激減、希少な資源になってしまいました。玉器店で「今買っておくと、将来必ず値上がりして儲かるよ。」などと、聞きたくない言葉で売り込みしています。玉は神聖なもの、こんな売り方をしてほしくありません。