…玉のお話-4…
「玉の楽しみ」
シリーズ最後のテーマ「玉の楽しみ」です。今回は、玉研究を振り返りながら、玉の虜になっていった経緯についてお話させていただきます。玉の楽しみについてご理解いただけるでしょう。
2005年から西安出張が始まり、何か楽しみを見つけたいと書院門古文化街を歩きました。偶然立ち寄った玉器店で、古い観音像を見つけたことが玉収集のきっかけになりました。観音像に光が当たると、像の中に神秘的な明りが灯ったのです。その神秘さに魅せられてしまいました。
休日には、博物館や骨董街の玉器を見て歩きました。素晴らしい作品に出合う度に胸がときめくのです。何故これ程までに?その謎を解くため玉研究を始めました。そして、知れば知るほど玉器が好きになっていったのです。青春時代に好きだった言葉、 「To know you is to love you.」を思い出します。
玉友達が現われ、その友達の友達も作品を持って集まってくるようになりました。正体不明の作品もあり、玉研究は更に進みました。西安では、日本では考えられないほど古い時代の作品に出合うことができるのです。「エ〜、3千年も前にこの作品がつくられたの?」など、驚かされてばかりでした。
古い玉器を眺めていると、歴史物語が浮かんでくるのです。同時時代に生きた偉人たちが登場してきて夢物語が始まります。例えば、作品が唐代の「観音立像」とすると、像の前で空海さんが経を読んでいるとか。玄宗皇帝と楊貴妃が暮らしている部屋に「伎楽飛天」が飾られてあるとかといった物語です。時には、自分自身を登場させて楽しんでいます。
西安では、多くの骨董品が土が付いたままで売られています。それは、土が付いてないと骨董品ではないと思っている人が西安に多いからでしょう。購入後にまずやることは、水を流しながら亀の子タワシと歯ブラシで土や汚れを落とします。その後は、元の持ち主にお許しをいただいてから、柔らかい布でひたすら磨き続けます。数年磨いていると、玉に沁み込んだ歴史の証が下から現れてくるのです。この証を見つけるのが、古玉器一番の楽しみかもしれません。 骨董品の中で、磨いて魅力が増すのは玉器だけでしょう。青銅器や古銭などは磨くほど味わいが無くなり、価値まで下がります。また、焼物のなかには、磨くと色や紋様が消えてしまうものまであります。これらには、ただ眺めるだけの楽しみしかありません。しかし、玉には磨くという大きな楽しみがあるのです。
玉器には、空想上の動物が多く彫られています。日本と共通するところでは、龍や獅子がいます。龍は新石器時代に冠をかぶった蛇から生まれ、その後爪の数、角や衣などを変えながら、今も生き続けています。獅子は戦国時代に、強い動物の強いところだけが集められて誕生しました。その後、神獣、辟邪、獅子と呼び名や姿を変えながらも、守り神として生き続けています。玉文化に触れていると、中国と日本の歴史が同時に見えてくるのです。
中国では玉が見直され、宝物の王座に返り咲きました。玉が持つ温かさとか神秘さといった魅力が再認識されたのでしょう。デパートでも玉コーナーが新設され、現代風にデザインされたネックレスやプレスレットが並べられるようになりました。 玉人気は高まるばかりですが採取量は激減、希少な資源になってしまいました。玉器店で「今買っておくと、将来必ず値上がりして儲かるよ。」などと、聞きたくない言葉で売り込みしています。玉は神聖なもの、こんな売り方をしてほしくありません。
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