…4月の西安…
秦嶺山脈への旅
バイク好きの連中に誘われて、週末に秦嶺山脈への旅に出た。痺れるような単気筒サウンドを響かせて、ハーレー・ダビットソン十数台が集まってくる。全員がハーレー・マーク入りのコスチュームで着飾っている。50歳になるまで1000ccバイクに乗っていた私にとっては、血が騒ぐイベントだ。バイクに乗りたいが、今回はアメリカ製ワンボックスカーに同乗させてもらっての旅である。谷間に激しい排気音を響かせてバイクの列は進む。
途中で山の小学校に立ち寄り、文房具をプレゼントする行事があった。西安の放送局も同行していて、夜のニュースで放映されるらしい。運動場にバイクが並び、おじさん達が整列。子供らは、異様な服装をしたおじさん達を怖がっているようにも見える。
贈呈式の後、昼食を馳走になりバイク連は再び発進。渓流を眺めながらの快適ドライブが続くはずであったが、主要道を外れた途端に道は怪しげな雰囲気に変わった。道幅は狭くなり路面は落石だらけ、転倒するバイクまで出始めた。道は曲がりくねり、雨で流された箇所まである。足を踏ん張り、手は椅子をしっかり掴んでいた。
休憩ポイントでバイク連の一人が、「一年分の砂埃を吸ったよ。」と笑いながら話していた。バイク乗りの楽しみは十分知っている。悔しい、一緒に砂埃を吸いたい。その他、「最近では、西安も自然を楽しむには苦労するようになった。楽に行ける所は人が多いだけだから。」と言っていた。休日の過ごし方も変わってきたようだ。
目的地に到着。牛の鳴き声しか聞こえない静かな谷間の村。世界的なパンダの調査基地になっていて、ドイツ人が設計したお洒落なロッジが建てられていた。今夜の泊まりは安心だ。
突然、隊長から流暢な日本語で声をかけられた。こんな山奥で日本語を聞くとは驚きだ。聞いてみると、日本で生活した経験があり、隊長が着ている革製のチョッキとズボンは日本で買い求めた品だという。
また、隊員たちの多くは、東京の専門店までハーレー用品を買いに行くとも言っていた。彼らのこだわりは半端じゃない。
村の名物麺で取りあえず空腹を満たし、暗くなってからは屋外でバーベキューとビールで仕上げをする。その後は、バイクの話で夜遅くまで盛り上がることだろう。年寄りは付き合えない、早めに引き揚げさせてもらうことにした。澄んだ空気、星空、無音を楽しみながら幸せな眠りについた。
翌朝、玄関前にBMWロングツアラーが数台停まっていた。食堂へ行ってみると、BMWマーク入りの服を着た連中が食事をしていた。野生派のハーレーグループ、紳士派のBMWグループ、それぞれにバイク乗りには服装までにもこだわりがある。
バイクを眺めていると、若き日のことが思い出される。軽快なホンダサウンドまで聞こえてきそうだ。そう言えば、ハーレーグループの中に1500ccホンダウイングが1台いた。グループの総合評価では、この車が一番快適で乗りやすいとのことであった。ライダーが快適さを求めるか、ワイルドな荒々しさを求めるか、それぞれの好みによるところだ。
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